日本の景気の減衰とともに地方の宴会場の需要は年々減少していたなか、2019年からのCOVID-19が流行し、宴会需要はほぼなくなった。
そこで、オーナーは宴会場を客室としてリノベーションできないかと考えた
旅館の宴会場を客室に、客室をレストランにリノベーションするプロジェクト。
[客室] 宴会場であったことから天井は高く、低層階にあるため眼下には春来川を臨む。それらの条件を生かし、他の客室フロアでは実現できない客室を提案した。
床のレベルを外に向かって高くすることで視線を自然と上に向け、空を眺められるよう誘導した。奥に進むと通常より低い位置サッシが配され、春来川を間近に眺めることができる。
家具のレイアウトはソファと小上がりを同じ高さに設定し、ソファでゆったりしつつそのまま小上がりで寝転べるというように、和の寛ぎと洋の快適性を両立した。
客室に源泉を引き込む計画であったため、ゆっくり入っていだけるようビューバスとし、自然を感じながら入浴できるようにした。
[お食事処 おりおり]
料亭に来たような雰囲気を感じていただければと思い、廊下を外と見立て、庇を突き出しそこから客席に入る構成とした。
料理を作っているシーンが眺められるライブキッチンを目玉にするため、廊下のはじめにオープンキッチンを配し、調理風景の活気を感じながら客席にアプローチできるようにした。
客席は3つのゾーンに分かれた構成とし、それぞれが1つのコンセプトを持つようにデザインした。
LIVE ZONEは白い凹凸のある三軸織物スクリーンはコンセプトの「折り」を表現する特徴のある壁で仕切られるエリアです。ライブキッチンと川に挟まれ、賑わいを感じられる空間として大きく仕切りました。
BOX ZONEは団体利用も可能な囲まれた空間とした。帯を折り曲げたような門が構えを持つ部屋とした。囲まれた部分は緩やかな領域を作り出します。
ROUND ZONEは折るを強調するため、「織ら」れたファブリックで包まれるような柔らかな曲面を意識した空間です。左官でシームレスに仕上げることで、曲面の柔らかさをより強く表現した。
9年前のリブランディングの際にホテル名の変更を行い、今回の改修では客室を「かわみ」、レストランを「お食事処 おりおり」とした。
かわみ:隣を流れる春来川を臨む、川床のような空間を提案していたので川を見る場所として「かわみ」。
また「川+水」でどちらも水をイメージさせることで浴室に特徴があることを暗に意味するように名付けました。
おりおり(折々):そのつどや季節ごとにと言う意味の「折々」と薄い杉を折って作った小箱、弁当箱と言う意味の「折々」。
季節ごとの美味し食事を弁当箱のように彩り豊かに提供すると言う意味を込めてつけました。
また、ホテル名「ゆあむ」の編むに掛けたデザイン要素としても機能しています。
ゆあむ:9年前のリブランディングの際にこの地域の豊岡杞柳細工(杞柳を編み込んだかご細工)をモチーフとしており、そこからの「編む」と有名な湯治場であったこの地域の「湯浴み」を掛け合わせ「ゆあむ」と名付けました。
本案件はグループ補助金を活用した計画であり、そのサポートもさせていただきました。
■設計
担当 杤尾直也 長澤若奈(元所員)
サイン/LOGO HYPHEN 原健三
アートワーク michiko